今回は、「スライディング」についてのお話をしていこうと思います。
日本では、砂入り人工芝のテニスコートが多いですが、砂入り人工芝は、すべてのサーフェスの中で最もスライディングをしやすいサーフェスと言えるでしょう。
そのため、プレー中にスライディングを行うことができる日本人プレーヤーは、多いと思います。
問題は、「ハードコートでもスライディングをすることができるか」というところにあります。
世界のトッププロのプレーを見てみると、アンドレ・アガシがトップレベルで活躍していた2000年代前半頃までは、ハードコートでスライディングが用いられることは、ほとんどありませんでした。
しかし、近年では、プロのプレーヤーはもちろん、ジュニアのトップレベルのプレーヤーでも、ハードコートでのスライディングを使うようになってきています。
そんな彼らのプレーを見て、「よし、自分もやってみよう!」と思って、ハードコートでのスライディングを試みるも、「全然滑れない!どうやって滑るの!?」となってしまう方も多いのではないでしょうか。
私自身も、最初は、そうでした。
そこで、今回は、ハードコートでスライディングをするコツをご紹介します。
スライディングをするメリット
スライディングのコツを説明する前に、スライディングをするメリットを明らかにしておきましょう。
ただむやみにスライディングをしても意味がありませんので(^^;
➀ボールへの移動時間の短縮
スライディングをする最大のメリットは、スライディングをすることによって、ボール(適切な打点)へ早く到達することができる、という点にあります。
仮に、プレーヤーとボール(適切な打点)との距離が、「一歩+30㎝」という状況があったとします。
このとき、そのプレーヤーが30㎝の距離をスライディングできる能力があれば、一歩を踏み出し、その踏み出した足を、そのまま30㎝スライドさせるだけでボールにたどり着くことができます。
ところが、そのプレーヤーが全くスライディングをすることができなかった場合、一歩だけではボールにたどり着くことができず、そこから30㎝先にあるボールに追いつくために、さらに、もう一歩を踏み出さなければならなくなります。
つまり、スライディングができれば、「一歩+スライディング」だけで、ボールに追いつくのに対して、スライディングができなければ、ボールに追いつくために「二歩」を要するということになるのです。「一歩+スライディング」に費やされる時間の方が「二歩」のそれよりも短いので、スライディングを利用した方が、より早くボールに追いつくことができるということになります。
➁足にかかる負担の軽減
また、前後左右にジャンプをしてボールを打った後、着地の際にスライディングをすることによって、着地時の衝撃をやわらげ、足にかかる負担を軽減するという効果があると考えられます。これによって、ボールを打つ際に、躊躇することなく、ジャンプすることができるようになります。
➀+➁=ディフェンス力(守備力)の向上
このようなスライディングを使うことによって、プレー中のディフェンス力を大きく上げることができます。
現在、世界のトップに君臨するジョコビッチは、ハードコートでのスライディングを多用しています。
皆さんもご存じのように、ジョコビッチは、極めて高いディフェンス力を持っていますが、彼のディフェンス力を支えている要素の一つが、スライディング技術だと言ってよいでしょう。
⇩の動画では、スライディングを利用したジョコビッチの見事なディフェンスを見ることができます。
ハードコートでスライディングをするためのコツ
それでは、いよいよ、ハードコートでスライディングをするためのコツをご説明します。
そのコツとは、スライディングさせる足を踏み込む際の入射角を小さくするということです。
そもそも、ハードコートでスライディングをしにくい理由は、ハードコートでは、他のサーフェスに比べて、靴底に対する摩擦力が強く働くためです。
したがって、ハードコートでのスライディングを成功させるためには、靴底に働く摩擦力を小さくする必要があります。
足を踏み込む際の入射角を小さくすると、靴底が地面に押し付けられる力が弱くなり、それにより、靴底に対して働く摩擦力が小さくなるのです。
それでは、実際にハードコートでスライディングをしている人達の足の入射角を見てみましょう。
上の写真は、錦織選手が右足でスライディングをしながらバックハンドストロークを打った直後の姿を捉えたものと思われますが、右足の入射角は小さいです。
上の写真は、スライディングをしながらフォアハンドストロークを打っているティームですが、その右足の入射角は、やはり小さくなっています。
まとめ
このように、ハードコートでのスライディングを成功させるコツは、スライドさせる足の入射角を小さくすることです。
足の入射角を小さくするためには、スタンス(足幅)を広くして、重心を低くする必要があります。
ジョコビッチがスライディングを得意としている要因の1つとして、股関節の柔軟性が高く、容易にスタンスを広くすることができるということが挙げられると考えています。
ハードコートでのスライディングを試してみたいという方は、まずは、ある程度の股関節の柔軟性を獲得するようにしてください。
そして、スライディングの練習を行う前には、ケガを予防するために、足関節(足首)と股関節のストレッチを入念に行うようにしましょう。
初めのうちは、サッカーのスライディングくらいに、入射角ができる限り小さくなるようにして練習すると、ケガのリスクが小さいと思います。
皆さんの健闘を祈ります。