テニスプレーヤーの皆さんは、きっと、ショートラリー(ミニテニス)をされたことがあると思います。
ショートラリーとは、サービスラインの中にボールをコントロールしながら行うラリーのことです。海外では「ミニテニス(mini tennis)」と呼ばれていますが、日本では「ショートラリー」と呼ぶことが多いので、この記事でも「ショートラリー」という表現を使うことにします。
さて、このショートラリーですが、これを練習としてやる意味があるのかどうか、ということが、テニス界における論争の1つとなっています。ショートラリーがウォーミングアップとしての効果を持つことは、広く認められていますが、ショートラリーが上達につながるのか、という問題です。
この問題は、やる意味があると思う人はやれば良いし、やる意味がないと思う人はやらなければ良いというだけの話であって、議論する価値は乏しいとも思えます。
しかし、私のような、テニスコーチという立場の人間からすると、これは重要な問題です。
私は、「ショートラリーは、とても効率的な練習である」という考えの持ち主で、レッスンの中でも、時間をかけて、しっかり行います。
ですから、「ショートラリーは、やる意味がない」という見解が勢力を伸ばしてしまいますと、「平野コーチのレッスンでは、無意味なショートラリーを延々とやっているから、彼は良くないコーチだね┐(´~`)┌」という厳しい評価を下されてしまうかもしれません。
もっとも、私のこれまでの生徒達がショートラリーの練習効果を証明してくれていますので、そのようなことはないかもしれませんが・・・。
この記事では、ショートラリーを行う意味、また、どのようなことに気を付けてショートラリーを行えば良いのか、ということについて解説します。
ショートラリーのメリットと効果
ショートラリーのメリットは、「ボールを打つ動作における自分自身の体の動きやラケットの動き、打点などを詳細に感知することができる」という点にあります。
このメリットを享受するためには、ショートラリーでは、フルスイングで速いボールを打ち合うのではなく、ゆったりとしたペースで行うということが前提として必要になります。
ショートラリーでは、相手プレーヤーが打つボールはゆっくりで、自分のラケットのスイングもゆっくりになります。
そのため、自分の体がどのように動いていて、どこで、どのようにボールを打っているのか、ということを自分自身で把握しやすくなります。
したがって、ボールを上手くコントロールできていない場合、その原因がどこにあるのか、どのように打ったら上手くコントロールできるのか、ということについて、自分で探究しやすくなるのです。
ベースラインの後ろからのラリーでは、通常は、体の動きが大きくなり、また、ラケットのスイングスピードも速くなるため、自分自身の体の動きや打点などを詳細に感知することは難しくなります。
練習時に球出しをしてくれる人がいる場合は、その人にゆっくりなボールを出してもらい、そのボールをゆっくりなスイングで打ち返す、という練習ができます。このような練習であれば、ショートラリーと同様の練習効果を得ることができるでしょう。実際、このような練習を行っているトッププロもいます。
しかし、ショートラリーでは、相手が打った「生きたボール」を打つことができるという点で、球出し練習には無い良さがあります。
念のために申し上げておきますが、ショートラリーをやらなければ上達しないというわけではありません。
私が重視しているのは、「限られた時間の中で、いかに早く上達することができるか」という「効率」です。
ショートラリーには、前述のようなメリットがあるため、ボールを打つ動作や打点を効率的に改善させることができる、という効果があるのです。
ショートラリーを活用しているトッププロ
私の意見だけでは、説得力に欠けるかもしれませんので、時間をかけてショートラリーを行っているトッププロをご紹介しておきます。
そのようなトッププロは沢山いると思いますが、ギリシャのステファノス・チチパスも、その1人です。
下の動画(0:39~1:33)を見ていただけば、彼が普段からショートラリーを沢山やっているということを想像できると思います。
この動画では、チチパスは、まさに延々とショートラリーをやっていますね。
私は、ショートラリーが自由自在にできるプレーヤーに対して、「ショートラリーを沢山やりましょう」とは言いません。しかし、実際には、アマチュアプレーヤーの多くは、ショートラリーを自由自在に行うことはできません。
近い将来、世界の頂点に立つであろうチチパスでさえ、これだけ多くの時間をショートラリーに費やしているということを、皆さんに知っていただきたいと思います。
まとめ
ここまで、ショートラリーの有用性について解説をしてきました。
この記事の冒頭で書いたように、ショートラリーの必要性を感じない人もいるでしょうし、やるか否かは個人の自由です。
しかし、「一般論として、ショートラリーは、やる意味がない」という見解は、明らかに誤りです。
ただし、プレーヤー自身が何も考えずにショートラリーをやっていても、大きな成果を得ることはできません。それでは、ただのウォーミングアップになってしまいます(私は、ウォーミングアップの一環としてショートラリーを行うことを否定しているわけではありません。)。
「どうしたら上手く打てるのか」という探究心を常に持って、ショートラリーに取り組むことが大切です。